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旭川ユネスコ協会主催「第28回 外国青年日本語主張発表会」授賞式 旭川大学留学生4名が受賞

2021年02月18日 木曜日 / カテゴリー ニュース

旭川ユネスコ協会主催「第28回 外国青年日本語主張発表会」授賞式

旭川大学留学生4名が受賞

 

旭川ユネスコ協会主催「第28回 外国青年日本語主張発表会(スピーチコンテスト)」に本学留学生4名が応募し、1月26日に旭川大学で授賞式が開催されました。

式典の冒頭では、旭川ユネスコ協会国際交流部佐野智子様からの「ユネスコの理念についての説明」に加え、同会和島徹男事務局長より「旭川ユネスコ協会の活動」が紹介されました。旭川ユネスコ協会は、「教育、科学及び文化上の関係を通じて、国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進する」というユネスコ憲章の理念と精神に則り、ユネスコの森づくり活動、世界寺子屋建設活動などと共に、外国青年日本語主張発表会やユネスコ作文コンクール等のユネスコ教育活動を実施しています。

コロナ禍の中であるため、出席者は主催者代表と国際交流委員会をはじめとする本学教職員の少数による開催で、スピーチ発表はビデオ録画したものが放映され、その後で審査結果の発表とコメントが告げられました。

中国出身で、経済学部経営経済学科3年の陈 肖枫(チン ショウフウ)さんは、「環境と共に歩む、持続可能な経済社会のあり方について」という演題で、旭川市のゴミ廃棄物処理施設でのゼミナール見学を通して考えた持続可能な環境のあり方について提言したスピーチで、旭川市長賞を受賞しました。

ベトナム出身で、経営経済学科1年のフ ヌ アイ ニュン さんは、日本の外国人技能研修生の労働問題を学んだ成果を基に、「留学生や実習生の人たちがもっと学びやすく、もっと働きやすい環境を作る架け橋になるために」という演題で、外国人技能実習生の労働問題や格差問題の是正を訴えたスピーチで、旭川市教育長賞を受賞しました。

モンゴル出身で、経営経済学科1年のデルゲルサイハン エンフジン さんは、「日本の文化に触れ、知る喜び」と題して、途上国の発展には教育システムの充実化が不可欠であることを主張したスピーチで、NHK旭川放送局長賞を受賞しました。

中国出身で、保健福祉学部コミュニティ福祉学科1年の李 承駿(リ ショウシュン)さんは、「平和な社会を築くために」という演題で、大学で学んだ日本国憲法の平和と人権の思想を踏まえ、日中友好の平和な社会のあり方について提言し、旭川ユネスコ協会会長賞を受賞しました。

旭川ユネスコ協会の林朋子会長からの総評では、「ユネスコは、国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を意識して活動していますが、今回の4名の発表では、それぞれが、『環境』『平等』『教育』『平和とパートナーシップ』といった国連の目標に合致したテーマであり、ユネスコの活動に沿うものでした。これからの世界を創っていくのは若い皆さま方です。今後も高い目標で活動されることを願っております。」とエールが送られました。

4名の留学生それぞれが、コンテスト応募から発表会までに至る準備の過程で放課後にスピーチ原稿と向き合い何度も文章の練り直しをしたり、不慣れな日本語力を克服しようと日本語でのスピーチ練習を幾度も繰り返すなど、チャレンジ精神はとても豊富で、数か月間に亘り、たゆまぬ努力を積み重ねてきました。

来賓として挨拶した山内学長は、環境主義・平和主義といったユネスコの理念とその精神への共感の弁を述べられたうえで、「旭川大学で学んでいる皆さんたちは、日本から“何か”を学んで帰ろうと日々学んでいることと思いますが、今回の経験もぜひ、その一つとして誇りを胸に持ち帰っていただきたい」と留学生に熱いメッセージを送りました。

受賞後の挨拶では、留学生それぞれが自信に満ちた表情で嬉しさを語る姿がとても印象的でした。挑戦し最後までやり遂げたことで得ることができた充実感と自信はかけがえのない貴重な経験であったと思います。今回のチャレンジをきっかけに、さらにアクティブな大学生活に繋げ、留学生活をより豊かなものにしてほしいと願います。

留学生にこうした貴重な経験の機会を頂きました旭川ユネスコ協会の皆様に、この場をお借りして、お礼申し上げます。ありがとうございました。

                                      <文責 国際交流委員 大野 剛志>

 

日本の3R(Reduce(リデュース),Reuse(リユース),Recycle(リサイクル))を

中国の環境保全に活かしたいと語る陈 肖枫さん

 

日本での外国人技能実習生のほぼ半数がベトナム人。母国の留学生や実習生たちが、

学びやすくもっと働きやすい環境を作る架け橋となりたいと語るフ ヌ アイ ニュン さん

 

留学で実感した日本文化の魅力。将来は母国モンゴルで、

日本語教育に携わりたいと語るデルゲルサイハン エンフジン さん

 

日本国憲法を学び、戦争のない平和な社会を築くためには、

歴史を知ること、情報を正しく見極めるリテラシーが必要だと語る李 承駿 さん

 

 

<国際交流委員会報告>

 

旭川ユネスコ協会主催のスピーチコンテストを聴かせていただいて

 

国際交流委員 旭川大学短期大学部 北島 滋

私のユネスコについての知識は恥ずかしながら世界文化・自然遺産の認定くらいの域を出ていませんでしたが、林朋子会長、国際交流担当の佐野智子先生からのお話をお聞きし、ユネスコ精神で様々の地域活動をなさっているのだということを改めて理解させていただきました。ありがとうございます。

発表はすべてビデオ録画であったのがちょっと残念ではありましたが、壇上で実際に発表をしているかのように生き生きとした印象をもちました。以下4人の発表者の内容と4人の方の今後の勉学についての私なりのアドバイスを含めてまとめてみました。

 

最初に、お聴きした経済学部3年の陳肖楓君の「環境と共に歩む、持続可能な経済社会のあり方について」は私の研究キャリアと重なって大変興味深いものでした。私は10年ほど前職の大学で「中間処理施設建設(焼却炉)に伴う紛争回避のモデル」という課題で自治体と共同研究し、実際に中間処理施設の建設計画に携わりました。陳肖楓君の発表の主題は、「中国の経済成長と環境保全の両立」にあるのだと思います。中国が先進国に追いつくために1978年以降、改革開放経済の推進で毎年10%を超える経済成長を達成してきました。中国国民の生活水準の向上は目を見張るものがあります。私が初めて中国を訪問したのは1997年で、上海で建設中の浦東地区開発を視察しました。1辺が100㎞の工業開発特区ですからそのスケールに驚きました。その後寧波、北京、天津そして杭州市にも行きました。陳肖楓君が杭州市で働いていたということで懐かしさと同時に親近感を感じました。

中国のごみ問題は私も強い関心を持っています。かつて私の研究室に客員教授として留学した浙江工業大学のT教授との共同研究で「研究産業クラスター・都市化の相互発展の連結メカニズムとその動態モデルに関する研究」『中国工業経済』(浙江工業大学、2006年)、そして私の修士課程のゼミ生であったK君(現在浙江工商大学外国語学部准教授)が「循環型社会形成と日本の廃棄物管理システム」『経済地理』(中国地理学会、2006年第26巻第1号)を執筆にあたって指導した経緯があります。2006年前後の中国国内のごみ処理は、分別収集が都市部でようやく始まったばかりでしたが、ごみ箱では分別されていてもごみ処理場では一緒になるという状況でした。しかも焼却処理ではなく埋め立て方式でした。陳肖楓君が研究している経済成長と環境保全の両立はできておりませんでした。現在の都市部ではかなり分別・資源化・焼却・埋め立てシステムが整備されてきていると思います。その証左として2018年に山内学長と一緒に杭州市にある浙江工商大学を訪問した際には、北京、天津の空とは異なりスモッグはなく、街中も非常にきれいに整備されていました。

旭川市における分別・資源化・焼却・埋め立てシステムを経済学部で研究をして、その成果を母国に戻って(戻るのであれば)括かしていただければと期待しております。特に、循環型社会の形成は、分別収集、資源化、焼却炉処分、埋め立てという一連の過程で、環境保全と市民の生活が両立しなければなりませんので、そのためにはこれらの過程にどのように市民参加を組み込むか、それがカギになるかと思います。陳肖楓君の発表は中国のごみ問題解決のための礎となる重要なものだと思います。陳肖楓君の今後の勉学に大いに期待しています。

 

ベトナムからの留学生である経済学部1年のフヌ アイ ニュンさんの発表は、いま最もホットな課題である「留学生や実習生の人たちが学びやすく、もっと働きやすい環境をつくる懸け橋になるために」でした。フヌ アイ ニュンさんの日本語は非常に聞きやすく高い水準のものでした。なるほど、これなら実習生に日本語を教えることができるというのも納得できました。フヌ アイ ニュンさんは、特定技能1号の実習生から日常の労働の過酷さと報酬を含む低劣な労働条件を聞いているからこそ、このような課題を設定したのだと思います。フヌ アイ ニュンさんは、実習生が多額の借金をして日本に来るのだというお話をしました。渡航を介在する悪質なブローカーが暗躍しているのだと思います。そこまでして日本に技能実習生として来日して5年間働いた報酬額が、渡航にあたっての借金を返してもなおかつ実習生の手元にそれなりの金額が残るものなのか。フヌ アイ ニュンさんに経済学部での卒業論文でその仕組みを実証的に研究して欲しいものです。具体的な科学的根拠を明らかにして初めて、フヌ アイ ニュンさんが主張する留学生や実習生の人たちが学びやすく、もっと働きやすい環境をつくる<懸け橋>になることができるのではないかと思います。フヌ アイ ニュンさんにもう一つ留意していただきたいことがあります。技能実習生は、日本の労働力不足を補うためにつくられた制度です。高度な技術を持った技能実習生2号の外国人労働者の滞在期限は永住が可能であり、家族も呼び寄せることができます。そうではない1号の技能実習生は最大5年の滞在期間しか認められません。確か2019年度4月から、日本政府はこの技能実習生制度改革を含む外国人労働力の大量導入に踏み切りました。実質的な移民政策への転換です。日本政府の留学・実習生制度の全体的な枠組みの理解を踏まえて、ぜひフヌ アイ ニュンさんにベトナムと日本との<懸け橋>になってもらいたいと思います。大いに期待しております。

 

モンゴルからの留学生で、経済学部1年のデルゲルサイハン エンフジンさんの発表は、「日本の文化に触れ、知る喜び」という演題でした。いつも思うのですが、母国で日本語を学習してきたとはいえ(もちろん日本語学校でも学習したとはいえ)、本当に驚くほど上手です。私の日本語よりはるかに聞き取りやすいですね。デルゲルサイハン エンフジンさん、陳肖楓君、フヌ アイ ニュンさん、李承駿君の日本語能力には本当に感心します。ところで、デルゲルサイハン エンフジンさんは母国モンゴルの現状を最初にお話ししていただきました。人口が329万人の内、国民の40%が1日2ドル未満で生活をしているとのことでした。経済的に発展途上にある国ですが、モンゴルという国・国民に関する知識について、私も含めて日本人はあまり知らないのではないかと思います。相撲の世界では白鵬とかモンゴル出身の方は有名ですが。おそらく日本人のモンゴルに対するイメージは大平原でゲルに住み、家畜とともに移動する古い遊牧民のそれではないかと思います。

エンフジンさんのお父さんが旅行好きでその影響もあって日本への留学を志したとお話しをしました。「先生になることが夢だけれども、恥ずかしがり屋でそれを封印して日本に留学した」とのことでした。私の印象からすれば、恥ずかしがり屋の方が海外留学したという話は聞いたことがありません。本当は心の芯の強い方で、たまたまそのことを自覚していなかったに過ぎないのではないかと思います。私自身「生活文化論」という授業を担当していますので、日本の文化について考えることが当然あります。エンフジンさんは文化の本質を<お互い仲良く生きるためにつくったルール>と、みごとに指摘しました。その通りだと思います。しかもそのルールは文章化されていないとも指摘しています。社会学ではそれを規範(norm)と呼び、それの成文化されたものが法です。エンフジンさんが買い物をしたとき店員さんが必ず<ありがとうございます>とお客に言うことに驚かれたと話をしていました。最初は<お互い仲良く生きるためにつくったルール>だったのでしょうが、それが段々と今のように習慣化されました。店員さんがお客さんに<ありがとうございます>というのを聞けば確かに決して悪い気はしません。エンフジンさんがお話しをした<お互い仲良く生きるためにつくったルール>(=生活の知恵)なのでしょう。つまりこのルールの作り方の違いが文化の型です。

エンフジンさんに大学院で日本文化とモンゴル文化の違いをぜひ研究していただきたいと思います。その際に、私の希望なのですが、単に両国の一般的な文化の型の違いだけではなく、その文化の型が経済・経営・商行為にどのように現れているのかを、日本とモンゴルのそれとを比較研究していただきたいと思います。大いに期待しています。

 

最後に発表されたコミュニティ福祉学科1年(以下「コミ福」と略)李承駿君の「平和な社会を築くために」は、私自身大いに関心を持ちました。ユネスコの目的と合致しているというだけではありません。現在地球上のどこかで戦争が、さらには小競り合いが多発しています。李承駿君の問題提起(発表)は時宜にかなったものだと思いました。

最近の日本人がもつ中国人(というより中国国家だと思いますが)に対する印象は悪くなったたように思います。新聞報道によるところが大きいこともありますが、<火のないところには煙が立たない>のたとえで、やはり中国の外交政策によるところもあるのかもしれません。

李承駿君の発表において、大学の社会学の授業で日本国憲法の歴史と理念を学んだ、と話されています。基本的人権、国民主権、平和主義の憲法理念が、1945年以降の75年間において日本人の戦死者がゼロであること、それは憲法第9条の戦争の放棄が極めて大きな役割を果たしたことをお話しされました。まったくその通りだと思います。私も45年に及ぶ教員生活の中で多くの留学生を教えかつ友好を深めてきました。多くはアジアの留学生ですが、特に中国、韓国、タイからの留学生と親交を結んできました。個人相互の友好関係は国境に関係なくスムーズにいきますが、国家が介在するとそれまでの友好関係がうまくいかなくなることがままあります。

ところで私が旭川大学短期大学部の介護福祉士養成課程で学んだことが2つあります。それは<傾聴>と<寄り添う>という概念です。李承駿君はコミ福で現在学び、将来は中国で老人ホーム、障がい者施設等をつくりたい、という起業意欲をお持ちだとのことです。素晴らしいことだと思います。<傾聴>と<寄り添う>という概念は介護福祉士だけではなく社会福祉士にも通じることですが、要介護者との関係を意味しています。良い介護、相談をするためには、要介護者の主張をじっくりと聞く(傾聴)必要があります。そうして初めて要介護者の心が開くのだと思います。寄り添うためには介護福祉士あるいは社会福祉士と要介護者との心の距離が近くなければなりません(距離をゼロにしてはいけませんが)。つまりSocial Distanceです。李承駿君が述べている「平和な社会を築くために」は、相手の(個人、集団、国家)の言うことを<傾聴>する、それなしには相互理解=寄り添う=Social Distanceを築くことは不可能です。ましてや平和なしには李承駿君が母国で実現しようと構想している介護福祉施設の建設も不可能です。李承駿君の発表から、私自身も大いに啓発されました。中国はまだ介護福祉分野の教育研究が日本と比較しても立ち遅れています。今後の勉学に期待すると同時に、日本で学んだ介護福祉の分野の知識・技術・技能を母国で大いに広めていただきたいと思います。

 

以上が私の4人の発表に対する感想とむしろ私自身が啓発されたことが大きかったことを付け加えました。ありがとうございました。

 

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