第１回　木谷　耕平（経済学部助教・地域研究所運営委員）
私が経済学や地域経済に関心を持ち、研究者を志したのは、大学卒業後、国民生活金融公庫（現・日本政策金融公庫）旭川支店に勤務したことがきっかけであった。私が勤務した2000年代初頭は不況のどん底で、地域経済は疲弊していた。私も業務の中で、返済に窮した多くの人々と接した。公庫での勤務を通じ、なぜ地域経済が苦境にあるのか、また、「豊かさ」や「幸せ」とは何かを考えるようになった。発展途上国の人々のように基礎的な衣食住には困っていなくても、日々の生活に追われる状況は「豊か」「幸福」なのか？物質的な豊かさだけが「豊かさ」なのか？という問題意識は、私の研究の根幹となっている。公庫を退職後、博士号取得のため留学した米国では、経済学の枠組みの中で、いかに「豊かさ」や「幸福」にアプローチするか、そしてそれをどう政策に活かせるのかを模索してきた。金銭では測れない「豊かさ」や「幸福」を考えることは、物質的豊かさが満たされた日本、なかでも物質以外の魅力を多く持つ地方では、特に重要である。今後は、北海道や旭川の「豊かさ」や「幸福」がどうなっているのか、そしてそれを地域政策にどう活かせるのかを研究したい。