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地研ニュース

2019年度「地域研究所企業見学会」を実施しました

2020年02月27日 木曜日 / カテゴリー 地研ニュース

この度、地域研究所は株式会社クリエイトファニチャーに企業見学しました。
同社は伝統的な民芸家具、クラシックを基調とした家具製品の販売をおこなっている旭川市にある家具メーカーです。今回の見学では主に以下の3点についてお話をお伺いし、見学しました。
1.岩満社長による創業から現在までの経緯、経営方針、企業理念・哲学についてのお話
2.障がい者雇用についてのお話
3.製材、組み立て、塗装、梱包の工場見学

以下は見学会に参加した教員のレポートです。

見学会レポート①

株式会社クリエイトファニチャーを見学して

旭川大学 経済学部 教授
旭川大学地域研究所 運営委員
杉村 樹可
 この度、旭川大学地域研究所主催の企業見学会として、株式会社クリエイトファニチャーを訪問させていただきました。以下、簡単に感想を述べさせていただきます。
 同社は、役員従業員約30名の家具製造業として旭川市内に立地しています。旭川は、1950年代以降周辺地域を含め、「旭川家具」ブランドとして全国的にも名高い家具産地を形成しています。しかし、1990年代に入り、バブル経済の崩壊とともに、低賃金である東アジアからの安価な家具や北欧で生産されたデザイン性の高い家具の輸入が増加すると、多くの旭川の家具メーカーは需要の変化に対応できずに業容を縮小させ、あるいは倒産の憂き目を見ることになりました。こうして、旭川家具産地を形成していた150社ほどの家具メーカーは半数ほどに減少したと言われています。
 しかし、このように旭川家具への逆風が収まらない2011年に同社は創業したのです。2011年には、未曽有の大災害、東日本大震災も発生しました。まさに「荒波の大海に向かって船出した」と言えるでしょう。しかも、かつて需要の変化に対応できなかった旭川家具の伝統である箱もの、民芸家具にあえて取り組み、製品の主力としています。創業しても「うまくいくはずがない」と考えるのが普通でしょう。ところが、同社は毎年利益を計上し、業績を順調に推移させています。最近では、社会貢献の意味から、障がい者雇用や廃棄物ゼロを目指すゼロ・エミッションに取り組むほどになっています。どうしてこのようのことができるのでしょうか。今回の企業見学と社長へのヒアリングにより、次のことが分かってきました。
 まず、当社は基本戦略として、集中―差別化戦略をとっていることです。日本全体や北海道全体を市場とするのではなく、ターゲットとする顧客を関東と関西の一部の顧客、伝統的な旭川家具への根強いニーズがあるニッチ市場に絞り込んでいるのです。需要が変化したからと言っても箱もの、民芸家具の需要がゼロになった訳ではありません。さらに、当社は、これら絞り込んだ顧客層の細かな要請に応えた製品開発を行い、製品の付加価値を高めています。この点が、当社製品の差別化、利益を生む源泉となっているのです。加えて、集中―差別化戦略を実行するための社内体制がきちんと組み立てられていることがポイントとなっています。社長が営業を担当して流通経路を抑え、かつ市場や個々の顧客のニーズを把握します。社長が持ち帰った市場や顧客のニーズをもとに、社内の優秀なデザイン専門担当者が設計を行います。この設計をもとに、社内の腕の良い家具職人が主として道産材を使って高品質の家具を作り上げるのです。外注を使わないので、市場や顧客からの細かな要請に的確に応え、かつ利益を確保することが可能となります。さらに、従来の常識では考えられない家具のネット販売を始め、広く需要動向を捉えています。
 今回の見学会では、常識を超えたとも言える創業企業に出会うことができ、感動しました。このような素晴らしい企業が、家具業界だけでなく、北海道内の様々な分野で生まれることを願います。

見学会レポート②

株式会社クリエイトファニチャーを見学して

旭川大学 保健福祉学部 保健看護学科 准教授
旭川大学地域研究所 運営委員
中川 初恵
 クリエイトファニチャーは、2011年創業の社員30名弱の旭川家具メーカーである。箪笥や棚といったいわゆる箱もの家具において、民芸やクラシックをベースに顧客ニーズに応じたオリジナル商品も手掛ける。ベースに真面目に則りながらも新しい発想と着想を信条とする。
 製品の多くは本州に出荷される。出荷先の8割が関東だったが、近年は他の地域へも広がりつつある。運賃コストがかかり重い家具は好まれないため、フラッシュ構造(木で枠を組み両側に板を貼った構造で、空洞ができ軽く狂いが少ない)や北欧テイストを取り入れ、道内より高湿度の環境を考慮して家具が反らないよう丁寧に塗装する。今後は海外での大口市場の販路開拓に向け、世界市場ニーズ予測に余念がなく、他メーカーとの協働を整備中である。
 上記の社風と今後の方針から人材にはコミュニケーション力と創造力を重視しているが、今年知的障害者を採用した。この会社が望む人材に合わないのではないかと尋ねたところ「知的障害者には集中力が高い者がいる。感情コントロールなどの難しい面もあるが、採用前に学校や保護者と密に連絡を取り、インターンシップでは時間をかけマッチング確認を行った。この中でスタッフは教え方の重要性に気づいてきた」とのことだった。知的障害者の雇用は、結果的にこの会社が重視するコミュニケーション力と創造力を高めるスタッフの人材育成につながっていた。

見学会レポート③

株式会社クリエイトファニチャーを見学して

旭川大学短期大学部 生活学科 生活福祉専攻 准教授
旭川大学地域研究所 研究員
平野 啓介

北海道旭川よりデザイン家具を発信し続けるこの会社は、JR新旭川駅から徒歩数分というところにある。
代表取締役の岩満昌史氏曰く、2011年設立のこの会社は、民芸やクラシックを中心としたスタイルの家具からフルオーダーメイド家具に至るまで対応しているとのこと。20余名のスタッフで、合板、家具製作、検品、出荷までの行程を担当している。東京にも営業所があり、60%は関東方面に出荷しているという。
家具はいわゆる「箱もの」と「足もの」にわかれている。一昔は家具一式といえば何百万円という「高級路線」から、近年は値ごろ感を出した「普及路線」が席巻している。生活スタイルの多様化により何をを選択するかは購入者のニーズによるも、将来にむけ国内需要に対応しつつ、海外需要を取り込かが企業の生き残りをかけた戦略として重要である。岩満氏の説明から印象に残った点を3点挙げたい。

(1)顧客ニーズ充足には柔軟な発想が必要
事務所には一見家具作りとは関係のないジャンルの書籍や趣味に関するモノが展示・飾られていた。
「顧客の価値基準に寄せていくためには、自分の枠組みだけでは限界…いろいろなモノをみて、イメージを膨らませていこう。おもしろいものがあったら取り入れていこう。」
(2)いいモノをつくれば売れる
「反対に売れるためにはいいモノをつくらなきゃいけない。顧客ニーズに対応していくには旭川家具の良さを大切にしつつ、市場に合わないものは思いきって切ることも。付加価値ある新商品の開発を常に考えている。」
(3)働きたいという障がい者を雇用したい
 中小企業家同友会の活動から、障がいを持つ方と関わる機会があったことから採用に至った。「即戦力として一から働きたい」という意欲があり、現在重要な戦力になっている。企業としても時代の潮流に応えていくため、加工技術を教えていくことが重要である。
作業場見学と質疑応答を含めてあっという間の2時間であった。伝統維持と顧客ニーズ対応の両立への糸口となる岩満氏の説明が、自分自身の働き方への重要なヒントにもなった。こうした思いが形になった家具を展示しているショールームが旭川デザインセンターにある。皆様お時間あればぜひ足を運ばれたい。

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