アール・ブリュット探訪Vol.2(かたるべの森美術館見学:研究ゼミナール)
障害者アートは存在するのか??:アール・ブリュット探訪
-【当麻かたるべの森】編-
長濱ゼミ研究ゼミナール(4年生)の報告です。
皆さん、こんにちは。
コミュニティ福祉学科4年の福原知謹(フクハラトモチカ)です。
今期(2024年度:2024.04~)、
長濱ゼミにてプロジェクト化し進めておりました「ゼミT制作プロジェクト」
長濱ゼミの新プロジェクトのリンクはこちら
最後にVol.3では、完成したTシャツの詳細を書かせていただきました。
このプロジェクトを行っていた中で、コンテンツの中心的ワードになっていたのが、
それが、この言葉
【アール・ブリュット】
このキーワードである、【アール・ブリュット】に関し、
深堀りをしていく目的で、新シリーズの執筆が始まりました。
前回の記事では、【アール・ブリュット】の歴史的変遷の序章を書かせていただきました。
前回の記事はこちら
アール・ブリュット探訪Vol.1 (障害者アートは存在するのか??:アール・ブリュット探訪 -アール・ブリュットとは??-)
前回の記事で記載しました、この新シリーズの目的は、
「現:障害者福祉分野をはじめ、
様々な福祉分野において、アートというものがどのような立ち位置にあるのか
(主に障害者福祉分野)」
今後の方向性としては、
①「アール・ブリュット」は、
・教育的側面で語られるのが正しいのか??
・福祉的側面で語られるのが正しいのか??
はたまた、
・教育的側面でも福祉的側面でもないのか。
②日本における、アートを主軸として活動している社会資源はどのようなものがあるのか
この2点をまずは主軸に進めていこうと考えております。
今回はその中でも②のお話し。
それでは、メインの記事に入っていこうと思います。
去る、2024年7月30日(火曜日)に、
当麻町にある、「社会福祉法人 当麻かたるべの森」が運営する、
かたるべの森美術館
に、施設見学に行きました。
かたるべの森美術館を、簡潔に短い言葉で表すならば、
「道内初の障がい者アートを中心にした美術館」
かたるべの森美術館
(正面写真)
(研究ゼミナールと長濱先生で来訪です)
なお、この美術館の建物は、旧小学校の建物を利用しています。
(石碑がありました。元々、当麻町立伊香牛小学校だったそうです。)
まずは、「社会福祉法人 当麻かたるべの森」の説明を。
「社会福祉法人 当麻かたるべの森」は【10の構想と理念】をかかげております。
「高齢者や障がいのある人にとって」
1.かたるべの森の敷地内に、木工・陶芸・織物等手作りの工房を設備し、高齢者や障がいを持つ人の活動と就労の場を創る。これらの活動が高齢者の生き甲斐や障がいを持つ人の工芸的、芸術的活動の場として障がい者の創造性が発揮されることにより、彼らの自由な発想が尊重される場となるように運営する。
2.「かたるべの森」周辺を付設の農牧場とし、有機農業による畑作と園芸さらに牧場を障がいを持つ人とともに堆進し、障がいを持つ人を含めて自然と調和して生きることを目的にするものである。
3.かたるべの森の地域福祉圏構想は、障がいを持つ人が、かたるべの森の工芸施設や通所施設を活動の場として利用し、当麻町に居住する地域住民としての誇りを持って暮らせるようにするものである。
「創造する人にとって」
4.障がいを持つ人の活動の場とするのみならず、将来、陶芸や木工、織物等の工芸家の工房を招請し、障がいを持つ人たちと共に歩む「工芸の森」としての性格も合わせ持つようにしていく。
「賛同者・協力者・企業にとって」
5.「かたるべの森」には都市部の人達の要望に応え、オ-ナ-制度の牧場を設備し、滞在型の宿泊施設を創り、この事業に賛同する人びとにとって、森林に親しむ滞在型の休養の場と障害者との交流の拠点としていく。
6.これらの工芸の施設・設備は町民や宿泊滞在する賛同者や来町者に開放し、体験学習と交流の場としていく。また、趣旨に賛同する企業の研修施設を設置してもらい、障がい者と共に木工、陶芸、織物や農作業を体験することにより、障がいを持つ人と交流し、誰もが人として尊重される社会の実現をめざす研修内容とすることができる。
「森林を大切に思う者にとって」
7.敷地の森林資源の育成と活用を図り、森林に親しむ環境を整備する。また、森林資源を利用した木工芸の振興に寄与する。
8.「かたるべの森」の建物は森林資源の豊富な当麻町の特徴を表現するために、森林と調和する建築を主体にして、特徴ある施設創りをする。
「行政と地域にとって」
9.かたるべの森の計画は、当麻町の障害者福祉計画を積極的に推進する役割を担い、行政との連携で障がいを持つ人の地域生活の支援を図ることが主たる目的である。
10.障がいを持つ人が入所の施設ではなく、地域居住することによって障がいを持つ人も持たない人も安心して暮らせる地域づくりをすることができる。
この、【10の構想と理念】の基、行われている事業内容としては、
・生活介護・就労継続支援B型事業「ギャラリーかたるべプラス」
・共同生活援助事業「ゆうあいホーム」
・放課後等デイサービス事業「メープルリーフ」
・相談支援事業「当麻町障がい者地域生活支援センターふらっと」
・日中一時支援事業「ギャラリーかたるべプラス」
・移動支援事業「地域生活応援センターハッピーデイ」
が事業内容として存在しております。
その中でも、
・生活介護・就労継続支援B型事業「ギャラリーかたるべプラス」の説明として、
「2017年4月情報:知的なハンディを持つ52人が通所しており、自宅から通う人が32名、ケアホームから通う人が20名。
日中の活動は、主にパン工房・木工房・織物工房・陶芸工房
作業活動では、作品を製作し販売し、売り上げは給料として支払われる。
給料の額は生活介護の人は2千円ら、就労支援の人は3千円から4万円までの段階に分かれている。
比較的障がいの重たい人は、主に生活の援が中心になるが、本人の状況に合わせて、情緒の安定に配慮し、作業活動の場で過ごしながら、個別に援することに配慮していく。
活動のプログラムとしては、毎週火曜日はかたるべの森美術館で「絵画創作」活動、一日絵画指導を専門とする職員の支援で絵画創作をしている。
作品は美術館で展示。また、かたるべの森を利用して、森遊びのトレッキング、カヌー体験、乗馬体験の日もある。」
とあり、僕ら長濱ゼミ研究ゼミナールは、
毎週火曜日のかたるべの森美術館での「絵画創作」活動、および、かたるべの森美術館を見学させていただきました。
「かたるべの森美術館」とは
・・・かたるべの森美術館は社会福祉法人かたるべの森が設置・運営する障がい者のための福祉事業所です。
障がい者自立支援法の規定では障がい者就労支援事業B型といわれるものであり、障がいのある人の就労に向けて支援することを目的としている。従って、かたるべの森美術館も基本的には知的障がいのある人や精神障がい者のための就労に向けて活動する場所。
そのために1階は知的と精神障がい者のための活動の場である陶芸と木工の作業室がある。また、飲食ができる喫茶店と店舗があります。ここで、知的障がいの人たちがスタッフとして働く。(現在カフェはやっていない)
精神障がい者の人たちもリサイクルショップを兼ねた販売コーナーを自主的に運営。
2階は創作活動をするアトリエと作品展示室が3室あります。さらには作品の収蔵室もある。また、旧伊香牛小学校の記念品展示の部屋も用意。この美術館を拠点に障がい者の福祉活動をさらに広げていきたいと考えている。
なお、前述の「社会福祉法人 当麻かたるべの森」の説明は、HP内の文章を一部抜粋して執筆しております。
詳細をご確認したい方は、「社会福祉法人 当麻かたるべの森」HPをご確認ください。
それでは、美術館の見学へ。
まず、
美術館に入るまえ、外壁から作品が登場します。
さらに、入口に入ると。
(ペンキで壁に書いたのだろうか。躍動感がすごい)
(矢印に導かれるまま、建物の中へ)
2階が展示場と作業場ですが、1階にも様々な作品が展示されています。
(パステル調のこれはクマなのか??それとも海獣のなにかか??)
(幾何学模様での色の組み合わせが計算されている)
(見ていてこっちも楽しくなる画風である)
(海外のチラシやデザインを模写したのだろうか)
それでは、2階へ
2階に行く途中の階段にも様々な作品があります。
(古着を使った立体的な作品も)
(2階にあがるとすぐにオブジェがおでむかえしてくれます)
2階にあがると、展示室が3つと作業場と作品保管庫があり、
3つの展示室には、主にかたるべメンバーの作品を中心に展覧会を開催されております。
(担当の方に案内していただけました)
アール・ブリュットの解釈に関しての考察は様々ありますが、
ひとつの解釈でありその解釈・考察に関しては後日、別記事に書かせていただきます。
今回はその中の一部を抜粋すると、
【バックグラウンドを知るということ】
というのがあります。
つまり、
作者に介在する支援者とのコミュニケーションの美しさも障がい者アートの魅力の可能性ではないかということです。
これは、
「アール・ブリュット=障がい者アート」と認識され、作品の評価に作者の障がいという特性が考慮されることにより、障がいをもった作者が芸術界のメインストリームにおいて本当の意味で自立できないのではないかという批判に対する逆説となると考えられます。
それが障がいの有無に関係なく、人を惹きつける重要な要素なのかもしれません。
障がい者文化と健常者社会と繋ぐためのメディアとしての「障がい者アート」と考えた場合、そういった作者と支援者の関係性の中にある「美しさ」もアートの一部となる可能性は多いにあります。
担当者さんのお話しを聞くなかでも、その内容は随所に聞くことができ、
企画展示をするのは、メンバーの生活を日々支えるスタッフ達と、メンバーであり、伴に、おもしろがったり・悩んだりしながら、ゆっくりとしたペースで展覧会を作っていきます。
今回の展覧会では、敢えてここでは利用者さんとは言わず、アーティストといいます。
今回の展覧会では、お二人のアーティストの作品が展示されていました。
(北海道新聞 2024年7月31日付け に かたるべの森の記事が掲載されました)
・Aさん
⇒ 創作活動でのAさんの表現方法はただ一つ。ひたすら色を塗ることです。
使う画材は、絵具か蜜蝋クレヨンで画用紙はもちろん額や板や空き箱などあらゆる美しい色をグイグイと塗り続けます。
色は自分で選ぶことも、職員が選ぶことも。
色を塗り重ねた画面の上に職員にサポートされながら好きなキャラクターの絵を描いたりすることもあります。
(Aさんの作品が壁一面に貼られている)
(色をどんどん重ねていくと画面が汚くなっていくことがあるが、Aさんの絵にはそれを感じさせない。)
(枠の中から見る世界観はまた一つ違う顔をみせてくれるかもしれない)
・Bさん
⇒ Bさんの描く作品は実に様々なものがある。あらゆる方向に交差さる摩訶不思議な線。まるで幽霊のようにおぼろげで消えてしまいそうな色彩。
その日の塚田さんの気分でBさんのペースで創作活動が進んでいく。
描かれたものはどれも未完成なようで掴みどころがなくてでも誰にも真似できないの、それがBさんらしいのではないだろうか。
(サインペンや色鉛筆で書いたものが多く作品としてある)
3つ目の展示室には、AさんとBさんの両作品が展示されています。
(立体的に絵が積み重なっており、一つ一つの作品がオブジェを創り出している)
展覧会の案内後は、利用者さんの創作活動の場を見学させていただきました。
(動物図鑑で象の写真を見ながら、自身の色に塗り替えていっている)
(こちらのCさんは、民謡を歌う方で、かたるべの森美術館まつりの会場のデザインを作っている途中である)
(Cさんの作品)
(こちらのDさんは東京タワーやスカイツリーなどの建造物に大変興味がある方で、写真を見ながら縮尺を正確に判断し、絵を完成させていく)
作業場には様々な作品たちが置いてある。
最後に作品保管庫を案内していただきました。
(日に日に作品が増えていく)
(一人一人の作品のバックナンバーをみるだけでも楽しめそうだ)
本日の記事はここまで。
気に入った作品はございましたでしょうか??
以下に、
パンフレット・リーフレットを載せておきます。
かたるべの森美術館にご興味ある方は一度訪れてみてください。
事前に連絡していただくと案内もしてもらえるとおもいます。
(8月10日におまつりがあります。興味がある方は是非とも行ってみてください。)
(現在、かたるべの森美術館で作品も展示されています。)
旭川市立大学
コミュニティ福祉学科4年
福原知謹